やりがいが見出せなくて

「由香!ごめんね!」

 

 

私は、再び顔の前で、手を合わせる。

 

 

「別に。もう慣れっこ。」

 

 

由香がやれやれとため息を吐いた。

 

 

 

かと思えばジッと私を見つめる。

 

 

 

「…七美。あのさ…」

 

 

 

「失礼します!!!こちら伝票です!!」

 

 

 

由香の声に被せて、馬鹿でかい店員さんの声が響く。

 

 

 

チラッと伝票を見て、「出よっか。」と由香が呟いた。

 

 

居酒屋を出て、急いでタクシーを止める。

 

 

 

タクシーに乗り込んでウィーンと窓を開けた。

 

 

 

「由香!さっき何か言おうとした!?」

 

 

 

私の問いに由香は、静かに首を横に振る。

 

 

 

何か言いたそうな顔をしてたけど今の私は、章司の所へといち早く行くことしか頭になかった。

 

 

 

「じゃあ!また、会社でね!」

 

 

 

由香に笑顔で、手を振り「スカイホテルまで。」とタクシーの運転手に行き先を告げた。

 

タクシーの中から流れ行くネオンの光を見つめる。

 

 

今から章司に会えると思うと胸がワクワクして、止まらない。

 

 

いつもの高級ホテルの同じ部屋。

 

 

ガチャ。

 

 

扉が開くと同時に甘い香りに包まれた。

 

 

香りまでもが甘いなんて…

 

 

「七美…」

 

 

ギュッと抱き締められたまま塞がれる唇。

 

 

優しく舌を絡め取られる。

 

 

甘い甘いキス。

 

 

 

ドサッ。

 

 

 

そのままフカフカのベッドに押し倒される。

 

 

 

優しく動く章司の手。

 

 

 

「っつ。七美…」

 

 

 

掠れる声で、私の名前を呼ぶ声。

 

 

 

全部大好き…

 

 

 

私は、章司の腕の中で、最高に幸せを感じていた。

 

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「一ノ瀬!!!!何度言ったらわかるんだ!!!また、間違ってる!!やり直せ!!!」

 

 

 

バサバサとさっき提出した書類が目の前で、舞う。

 

 

 

「もう二年目だろ!?新入社員からやり直すか!?

 

新入社員でもまだ、マシな仕事するぞ!!!」

 

 

 

キーンと私の耳に響く課長の声。

 

 

 

部の人たちは、「また、始まったと」と言わんばかりの顔で、私が怒鳴られていることに全く興味を示さない。

 

 

 

「申し訳ございません!!」

 

 

 

頭をこれでもかってくらい下げた。

 

 

 

「チッ。一時間でやり直せ。」

 

 

 

舌打ち!!?

 

 

 

今舌打ちした!!!?

 

 

 

くっそーー!!!

 

 

 

鬼課長め!!!!

 

 

 

眉間に皺寄せて、いつも怒ってばっかり!!

 

 

 

…まぁ。私がミスるからだけど…

 

 

そんなことを思いながらジーと課長を見つめるとギロッと恐ろしい目で睨まれた。

 

 

ヒッ!!!

 

 

怖っ!!!!

 

 

 

私は、慌てて自分のデスクに戻る。

 

 

 

 

大学を卒業して、奇跡的に大手一流企業に就職。

 

 

 

私が働く会社は、主に家庭用洗剤などを扱う会社。

 

 

 

洗剤以外にも化粧品やシャンプーなど他にもたくさんヒット商品がある。

 

 

 

日本の家庭には、必ず一つは、我が社の商品があってもおかしくない。

 

 

 

誰もが知る大手一流企業なのだ。

 

 

 

 

そして、何かの間違いじゃないかと思ったけど私は、第一営業部に配属。

 

 

入社して、一年。

 

 

 

今年で、二年目。

 

 

 

俄然やる気みなぎる!ではなく…仕事にやり甲斐を見出せない今日この頃。