出来ない部下

 

「クスクス。また、やっちゃったね。」

 

 

デスクに戻ると隣の席の一年先輩の柴崎さんが私を見て、クスクス笑う。

 

 

柴崎さんは、フワフワの茶髪にクリッとした目の甘いマスクのイケメン。

 

 

身長も高くて、はっきり言って私のタイプ。

 

 

仕事も出来て、優秀で、会社の女性社員からの人気も高い。

 

 

「はい。やっちゃいました。」

 

 

私は、苦笑いで、柴崎さんを見る。

 

 

「課長ももう少し言い方変えてくれたらね…」

 

 

柴崎さんは、チラッと課長を盗み見た。

 

 

 

「まぁ。無理ないか…仕事の鬼だもんね。あの人のプライベートとか全然想像つかない。」

 

 

 

柴崎さんの言葉に激しく同感。

 

 

 

うちの部の課長は、入社後最速、最年少で課長の座に上り詰めた超エリート。

 

高身長、高学歴、高収入なのは、認めるけど真っ黒な前髪から覗く冷たい目は、私のタイプでは、ない。

 

 

 

私は、もっとこう甘い感じの男が好き。

 

 

 

章司みたいな。

 

 

 

デヘッ!

 

 

 

「一ノ瀬!!ボーとしてないで早く仕事しろ!!!」

 

 

章司を思い出しニヤける私にまたもや課長からのお怒りの言葉がフロアに響く。

 

 

「は、はい!!!」

 

 

シャキンと背筋を伸ばして、パソコンに向かった。

 

 

______

 

 

 

「疲れたー!!」

 

 

 

お昼休み会社の食堂で、間抜けな声を出す。

 

 

 

私は、お決まりのハンバーグ定食を前に項垂れる。

 

 

 

「早く食べないと昼休み終わるわよ。」

 

 

 

目の前に座る由香が淡々と生姜焼き定食を口に運ぶ。

 

同期の由香は、商品開発部に配属。

 

 

私とは、違って、上司からの信頼も厚く優秀だ。

 

 

 

私たちは、時々こうやって会社の食堂で、お昼を共にする。

 

 

「何?また、須藤課長に怒鳴られたの?」

 

 

 

由香の言葉に首を縦に振る。

 

 

「気の毒だね?。」

 

 

由香が哀れな顔を私に向ける。

 

 

「ほんとに!!あんな怒鳴ることないと思うんだよね!!」

 

 

私は、鼻息荒くハンバーグにお箸を突き刺した。

 

 

 

「いや。あんたじゃなくて、須藤課長が気の毒だなーって。」

 

 

ぬぇ!!!?

 

 

 

なんですと!!?

 

 

 

なぜに課長が気の毒なんですか由香さん!?

 

 

 

目を見開く私をやれやれと由香が見つめる。

 

「出来ない部下を持つと上司は、大変だわ。」

 

 

出来ない部下って!!!

 

 

酷い!!!!

 

 

そりゃあ…由香みたいに優秀じゃないけど!!

 

 

私なりには、頑張ってるつもりなのに!!

 

 

 

「まぁ。須藤課長って特別厳しいって話は、聞くけどね。」

 

 

もう生姜焼き定食を食べ終えた由香は、お箸を置いて、お茶に手を伸ばした。

 

 

「28歳の若さで、課長まで上り詰めた人だし部下に求めるものも高いらしい。」

 

 

確かに課長が凄いことは、認めるけどみんながみんな課長みたいに仕事が出来るわけじゃない。

 

 

部下のレベルに合わせて、指導するべきでしょ?

 

 

私は、ようやくハンバーグを口に運んだ。